沖縄よろず『支援事例』など
沖縄よろずで、ご相談されたお客様の「経営課題」の支援事例などです。
毎週日曜日「沖縄タイムス」紙の経済面に連載中です!
支援事例「介護事業の後継者・管理者を育成したい」
経営者の価値観を共有
◆ 企業名 非公表
◆ 業 種 高齢者福祉事業(通所介護)
◆ 所在地 非公表
◆ 資本金 非公表
◆ 創 業 非公表
◆ 従業員 非公表
【相談】
代表が管理者を兼任して高齢者介護事業所を運営しているが、高齢となり今後事業を継続していくために後継者を立てたい。後継者が自分と同じく経営と管理を兼務できるよう、人材を育成していくにはどうしたらよいか。
【回答】
企業経営者の平均年齢は、2023年の調査によると33年連続で上昇し60歳を超えた。経営者交代は増えているものの、後継者育成が間に合わず事業承継に支障をきたすケースも少なくない。調査では経営者が交代する平均年齢は68・7歳で、経営者の病気や死亡が原因で倒産する事例が40~50%を占めている。中小企業基盤整備機構調べでは後継者の育成には通常5~6年かかると言われ、事業継続における最大のリスク対策として早期からの取り組みが求められている。
今回、相談に来られたのは長年高齢者福祉に携わってきた経営者で、コロナ禍を乗り越え事業を立て直し運営を継続してきた。しかし、物価高や人件費高騰により収益が圧迫され、従来のやり方に限界を感じていた。新体制による刷新を視野に事業承継を進める必要性を強く感じ、よろず支援拠点へ相談に来られた。
相談者は後継の候補者選定は済んでいたため、今後の経営に向けて大きく三つの取り組みをアドバイスした。第一に、経営者としての価値観を後継者と共有し、収支バランスの感覚を養うことで、適正な支出判断ができるようにすること。第二に、高齢者介護事業に関する市場動向や基準を正しく理解し、質の高いサービスを提供する体制を構築・維持すること。第三に、従業員や関係者が自分の役割を理解し、業務に専念し成長できるようにするため、知見を報酬やキャリアに結びつける体制を整えることだ。
これらの取り組みの一環として、後継者が経営に関する判断を下す際、担当者が事前に確認を取り、相談者が一定期間その判断に誤りがないかチェックする仕組みを構築した。また、経営方針や基準が明文化されていない部分については、規定や基準を文書化し後継者が迷わず経営判断できるようにした。
事業承継において後継者に違和感を抱く場合は、経営方針や基準が明確にされていないからに他ならない。後継者の育成と会社の経営基盤の整備が事業承継の成否を決めると思う。
(県よろず支援拠点コーディネーター・鈴木和久)
※掲載内容は相談者の承諾を得て紹介しています。経営者のあらゆる相談を無料で受け付けます。ご相談は、電話098(851)8460のよろず支援拠点、またはお近くの商工会へお問い合わせください。
詳しくはコチラ >> https://yorozu.ti-da.net/e12837902.html
支援事例「コロナで低迷 建物も老朽化」
問題整理し解決へ行動
◆ 企業名 非公開
◆ 業 種 宿泊業
◆ 所在地 沖縄本島
◆ 資本金 非公開
◆ 創 業 非公開
◆ 従業員 非公開
【相談】
コロナ禍後も宿泊施設の売り上げは上がらない。経営課題に加えて建物の老朽化などの問題が起こり、目の前の問題の対応に追われる毎日が続いている。何をどうしていいか、相談に乗ってもらいたい。
【回答】
相談者は沖縄本島で特色ある宿を運営しており、経営は順調であった。しかし、新型コロナウイルス感染症の影響を受け、売り上げが減少し、借り入れでしのいできた。コロナ後も客足は戻らず、借金返済も含め経営は厳しい局面が続いてきた。宿の運営以外にもさまざまな問題が重なり、相談者本人が精神的にも参っていたので、知人からよろず支援拠点に相談するように促されて去年11月に相談に訪れた。
お話をうかがって分かったことは、宿兼住居として契約している物件は老朽化などの問題もあり、貸主側から4カ月後に退去するよう求められていた。金融機関等からの借入総額は1200万円、手元資金は60万円しかないとのこと。返済するための事業収益はない。金融機関や不動産業者にも相談はしていないとのこと。相談しなければ協力してもらうこともできないし、解決に向けて動き始めなければ状況を変えることができない。
相談者の漠然とした不安を払拭するため、問題を具体的に整理して今後のシミュレーションを一緒に実施してみた。最終的に個人破産も含め、どうなっていくのかを具体的に認識していただくことができた。今後を予測することで、今何をするべきかが分かることが多い。
相談者は複数回の相談を通して事業を再建する意思を固め、翌月には金融機関、不動産事業者との協議を始めた。結果、理解と協力が得られ、建物からの退去は7カ月間延長され、その間は事業と住居も継続することができた。同時に家族との生活を守るために弁護士を通した私的整理にも着手した。個人事業主の多くが事業と生活が密接に重なっている。
2024年10月末、約10年間続けていた宿は閉鎖した。新たに家族の事情に沿った住居も見つける事ができた。残念ながら宿泊事業は一時休業を選択。アルバイトなどで生計を立てつつ、事業再開に向け、一つずつ課題を解決することに取り組んでいる。
相談者からは「家族と一緒に努力できるだけでありがたい」と前向きの言葉を頂いた。
(県よろず支援拠点コーディネーター・赤嶺輝昌)
※一人で悩まずに沖縄県よろず支援へ相談下さい。ご相談は、電話098(851)8460のよろず支援拠点、またはお近くの商工会へお問い合わせください。
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支援事例「大交易会用パンフ作りたい」
バイヤー目線 意識して
◆ 企業名 株式会社沖縄ジンジャーシロップ
◆ 業 種 製造業
◆ 所在地 石垣市
◆ 資本金 非公表
◆ 創 業 2024年
◆ 従業員 なし
【相談】
黒糖ジンジャーシロップをフランスパリに向けて販売展開してきたが、コロナ禍などの影響もあり、新たな販路を求め、アジア圏での海外販路開拓に取り組みたい。沖縄大交易会用のパンフレット制作について相談したい。
【回答】
波照間島産黒糖100%を使った「ゆきさんの黒糖ジンジャーシロップ」は、1998年石垣島にオープンした小さなバーで誕生した。おいしいカクテルとパンケーキを提供するため、島の素材を使ったシロップを作り始めたことがきっかけである。シロップを気に入ったお客さまにお店の分を小分けしたところ評判が良く商品化した。
商品のポテンシャルは高く年々着実に販路を拡大。2014年に離島フェアで優良特産品優秀賞受賞、18年からは海外へも展開するようになった。長年検討していた法人化を支援し、今年3月に株式会社沖縄ジンジャーシロップとして新たなスタートを切った。
海外販路は主にフランスのパリをターゲットに展開してきた。しかし新型コロナの影響をはじめとする国際情勢の変化が販路展開に影響を及ぼしてきた。そんな中、新たな海外販路先として候補にしたのが東南アジア圏である。そのために今月21日から開催される沖縄大交易会への参加を決意。代表の加藤雪子さんから商談会に向けたパンフレット制作について相談があった。沖縄大交易会は海外企業のバイヤーが中心の商談会のため、希望する東南アジア圏の企業と出会えるチャンスである。
今回は消費者目線でのパンフレット制作ではなくバイヤー目線で作成するようアドバイスした。交易会は事前予約の商談がメインだが、フリーで巡回しているバイヤーの目をキャッチするような文章(翻訳含む)や写真を活用。情報を集約し一目で伝わるような表現を意識するよう提案した。
作成したパンフレットが大交易会で多くのバイヤーの目に留まり、多くの商談がまとまることを期待し、石垣サテライトでは引き続き伴走しながらサポートしていきたい。
問い合わせは株式会社沖縄ジンジャーシロップ、電話0980(88)8638。
(県よろず支援拠点コーディネーター・平田睦)
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支援事例「業務委託契約書作りに苦戦」
リスク回避 項目が重要
◆ 企業名 ヒガデザイン
◆ 業 種 ウェブサイト制作
◆ 所在地 読谷村
◆ 資本金 個人事業
◆ 創 業 2023年1月
◆ 従業員 1人
【相談】
ウェブ制作事業を立ち上げ、新期プロジェクト受注で業務委託契約書を作成してみたが、ノウハウ不足のため、内容確認や今後のトラブル防止に必要な条項についてのアドバイスが欲しい。
【回答】
代表の比嘉香さんは、前職の飲食業に従事していた時にあるチラシを制作したことが好評で、デザインの道を歩む決意を固めた。開業して個人事業主や中小企業向けにホームページの制作を手掛け、顧客が自ら簡単に更新できるよう配慮したサービスを提供している。事業に欠かせないこのサービスは利用者から好評である。
今回、比嘉さんは本土企業との長期取引を受注し、先方から「業務委託契約書」の取り交わしを求められた。取引先相手が作成した契約書の対応について内容を確認したものの不安が残り、よろず支援拠点に相談に訪れた。
初めての取引の場合、商習慣の違いもありトラブル防止のため事前に取引ルールを定めておくことは大切である。口約束や事前合意なしの取引を進めた場合、次のようなトラブル発生のリスクがある。(1)取引の範囲や金額の認識が食い違う(2)修正依頼などへの対応が難しくなる(3)納品済み取引が修正依頼を受け続ける―などである。
これらのリスクを避けるため、契約書に以下の項目等を盛り込むことを勧めた。(1)取引範囲・金額・数量・納品日や支払日などを明記(2)検収と契約不適合責任期間の設定―などである。契約書締結は手間がかかるが、円滑な取引成立やリスク回避の面で大きなメリットがある。よろず支援拠点では弁護士とIT担当の両コーディネーターが連携し法的観点と実務的視点の両面からアドバイスした。
相談後、比嘉さんは取引先と契約条件を調整し双方納得の上で無事契約を締結、良好な取引関係を維持している。また地元の読谷村商工会は、ヒガデザインのサービスチラシを会員企業に配布、推薦した。今後も地元や県外の事業者との取引を通じ一層の事業発展が期待される。
問い合わせはヒガデザイン、電話080(4286)2012。
(県よろず支援拠点コーディネーター・金子泉)
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支援事例「過去に返済遅延 新規融資どうすれば」
債務正常化向け手続き
◆ 企業名 H社
◆ 業 種 菓子製造業
◆ 所在地 非公表
◆ 資本金 700万円
◆ 創 業 2013年
◆ 従業員 27人
【相談】
菓子製造のOEM委託で増産依頼を受けたが、現設備では限界があり、工場移転や機械導入に資金が必要。しかし信用問題で新規融資が難しい。資金調達策のアドバイスを。
【回答】
菓子製造小売業者がM&Aを通じて再建を試みたが、創業から6年連続で赤字経営が続いた。経営者が交代しても赤字体質は改善されず、買掛金の未払いが長期化し、金融機関からの借入金も延滞となった。その結果、金融機関から信用保証協会などに代位弁済が実施され、経営はさらに厳しい状況に追い込まれていた。危機的な状況下でも、経営者と残った社員は抜本的な経営改善に着手し、赤字店舗の閉鎖や原価率の見直しを進め、少しずつ経営を改善し4期連続で黒字を達成した。
特にOEM受注の菓子の製造受託が好調で、取引先から増産の依頼が来た。しかし現状の設備では手作業による型抜き作業が多く生産能力は1日2千枚が限界である。依頼元からは現状の5倍の生産量を求められているが、工場兼店舗が狭く新たな設備導入も困難である。そのため、新工場の改装資金と新たな機械設備の導入資金が必要となり、県内地銀系の債権回収会社を通してよろず支援拠点に相談が来た。
しかし、融資を受けるには、まず代位弁済された債務を正常化(求償権消滅)することが条件となっている。そのために必要な手続きを県信用保証協会に確認した。債権回収会社と新たに融資する金融機関との交渉を進め、県中小企業活性化協議会に経営改善計画書の作成を依頼した。金融機関等との調整やバンクミーティングを重ね、関係機関の協力体制を築き上げていった。
最終的に県中小企業活性化協議会による経営改善計画書を基に求償権の消滅が認められ、通常の融資条件に戻すことができた。さらに沖縄振興開発金融公庫の資本性劣後ローンを活用し、既存の債務を整理しつつ新たな設備投資のための資金調達が可能となった。
長期化していた買掛金の未払いも解消し資金繰りの改善が大幅に進んだ。H社の代表である相談者は「再生を実現出来る日が本当に来た。社員とともに今以上の成長をしていきたい」と述べている。よろず支援拠点では引き続き伴走して支援していきたい。(県よろず支援拠点サブチーフコーディネーター・金城力)
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支援事例「効果的な集客チラシとは」
情報整理して見やすく
◆ 企業名 株式会社フットサルティーダイン沖縄
◆ 業 種 フットサルコートの管理運営
◆ 所在地 豊見城市渡橋名289番地3
◆ 資本金 非公表
◆ 創 業 2007年9月
◆ 従業員 非公表
【相談】
豊見城市でフットサルコートを時間貸しする事業を行っている。時間貸し以外にフットサル大会の開催やスクールの運営等も行っているが、利用客数は伸び悩んでいる。効果的な集客チラシ作成についてアドバイスがほしい。
【回答】
近年気軽に始められるスポーツの一つとして、フットサルは小さな子供からシニア世代まで幅広く浸透してきている。週末の運動や仕事帰りに寄り道して行えるスポーツとしても人気がある。ナイター営業もしていて国際基準のコートを3面備えているところは多くはない。
このようなフットサルコートを、相談者の大原久志さんは豊見城市で運営している。利用者に好条件のそろったコートを保有しているが、利用客数は伸び悩んでいる。利用客数を増やすため、近隣にポスティングするチラシの改善点についてのアドバイスを求め相談に来られた。
持参された2種類のチラシは4歳から小学生までの子どもたちのスクール生の募集と、個人客へコートレンタルの周知を目的とされていた。だが、スクールの雰囲気がわかりにくく情報が多過ぎて読みにくい印象がある。周知したい内容やスクールの状況等をヒアリングした上で以下の提案を行った。
表面に記載されたスタッフの丁寧な指導と、楽しみながら技術を磨くことができる環境であることを伝えるためのキャッチコピー「楽しみながらスキルアップ!ワンランク上を目指す子どもたちの期待に応えます」を目立たせることと、目をひくデザインになるような画像を用いるようアドバイス。
スクール詳細は裏面へ移動して、見やすさと情報の整理を行うよう提案。個サル(個人参加のフットサル)の予約チラシについては、シューズやボールのレンタルがあり誰でも気軽に参加できることが伝わる言葉で、「とりあえずボール蹴ろうよ!」と提案した。
新たに修正したチラシを近隣に配布し、店舗の受付周辺やHPへの掲載を行った結果、新規の問い合わせが増え集客につながっている。問い合わせはフットサルティーダイン沖縄、098(851)2020。
(よろず支援拠点コーディネーター・川上真味)
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沖縄タイムス掲載 500 回「中小の経営者孤立させない」
売り上げ拡大 事例紹介
沖縄県内企業4万4424(2021年)の99.9%が中小企業、従業者総数38万9484人のうち約90%が中小企業で働く。地域の税収や雇用は中小企業に大きく依存し、地域経済を支えている。社会の核心的存在である中小企業の経営者を孤立させてはいけない。
◆ 企業名 県よろず支援拠点
◆ 業 種 経営相談窓口
◆ 所在地 那覇市
◆ 創 業 2014年
◆ 相談員 30人
中小企業などの経営相談を担うよろず支援拠点は11年目を迎えた。これまで約6万件の相談に対応して、その満足度は96%(2023年度)。完璧とは言えないが、これは他の支援機関や金融機関と連携して支援に当たってきたこと、沖縄タイムス紙がこのコーナーの連載を10年以上継続してきたことが大きな力となった。
改めて過去の連載記事を振り返ると、社会環境の変化に対応してきた事例が多い。特に未曽有の災害と言えるコロナ禍を経て、地域経済も大きく様変わりした。ニューノーマルと言われる社会変化の中で、大きく成長できた企業もあれば、コロナ関連融資などの返済に苦慮する事業者も多い。
先月は決算期と重なったこともあり、県信用保証協会の代位弁済が急増した。休・廃業、倒産も増えている。これ以上地域経済を支えてきた中小企業を減少させてはいけないと強く感じている。
いわゆるゼロゼロ融資などは災害による赤字補填資金であり、売り上げを伸ばすための事業性資金ではなかったので、その返済には相当の努力を要する。このことを理解して、行政を含めて地域社会が中小企業を支えてほしい。
よろず支援拠点のミッションは、商いを成り立たせるためのサポートである。これまで書かせていただいた事例でも、多くを「売り上げ拡大」に割いてきている。まず事業による利益を確保し、経営を安定させることが商売の基本である。
具体的事例の中から、自社に参考になる手法を取り入れて経営改善につなげていけば良い。これまでもこのコーナーの紙面を切り抜いて相談に来られる方も多い。
500回目の連載に当たり沖縄タイムス紙のご協力にお礼を申し上げるとともに、引き続き県内中小企業を支えていただくようお願いしたい。
問い合わせは、沖縄県よろず支援拠点、電話098(851)8460。
(県よろず支援拠点チーフコーディネーター・上地哲)
※掲載内容は相談者の承諾を得て紹介しています。経営者のあらゆる相談を無料で受け付けます。ご相談は、よろず支援拠点、またはお近くの商工会へお問い合わせください。
詳しくはコチラ >> https://yorozu.ti-da.net/e12812093.html
よろず経営相談 300 万件超
課題解決へ地道に伴走
中小企業や小規模事業者向け無料の経営相談所「よろず支援拠点」を、政府が全ての都道府県に設けて10年が経過した。売り上げ拡大や商品開発、人手不足といった相談対応は延べ300万件を超えた。中小企業診断士や弁護士らが経営者の課題解決に〝伴走〟する地道な取り組みが続く。
「専門家に付いてもらい、数字を見て考える大切さを知った」。宮崎市のバラ園「こどものくにガーデン」を管理するガーデナー、源香さん(49)は話す。よろず拠点の助言で挑戦したクラウドファンディング(CF)で目標額を上回る516万円を集め、看板作成や備品購入などに充てた。
バラ園は当時、運営会社から管理委託費が半減される事態に直面。よろず拠点の中小企業診断士、中城健太さん(36)は「CFは応援してくれる人が見える。金融機関の融資や自治体の補助金よりも『みんなでつくる』ことでドラマが生まれると思った」と振り返る。
経営相談を経て、温泉旅館からフォトスタジオに業態を切り替えたのが秋田県大仙市の「ドレスリゾートこわくび」。東日本大震災後に経営難に陥り、新型コロナウイルス禍が追い打ちとなった。日々の運転資金が必要な旅館業を終え、宿泊客向けサービスだったドレス撮影を専業にした。
今は千着超そろえたドレスを自由に着てもらい、撮影し放題のプランが人気だ。女性グループや家族連れのほか、コスプレやウエディング写真撮影目的の客も訪れる。
伊藤竜寛さん(65)、久子さん(59)夫妻はホームページや交流サイト(SNS)、館内の展示などについても助言を受けた。竜寛さんは「支援は心の支えで、自信を持たせてくれた。これからも2人で続けていきたい」と前向きに話す。
よろず支援拠点全国本部(中小企業基盤整備機構)によると、2014年度の設立から年々増えていた全国の相談件数はコロナ禍で急増。23年度は約43万件と前年度より18%減ったが、コロナ前の水準を上回った。
中小企業庁の担当者は「全ての答えをよろず拠点が出すのではなく、信頼関係を築きながら、経営者が課題を認識し自立していくのが理想的だ」と指摘する。
24年4~6月の相談対応は山梨や滋賀、徳島の3県は各約1300件にとどまり、都道府県ごとに件数のばらつきが大きい。中企庁は認知度向上に向け、中小企業と接点が多い金融機関などに紹介してもらえるよう働きかける方針だ。
令和 6 年 8 月 6 日 沖縄タイムス経済面掲載
こちらもご覧ください >> https://yorozu.ti-da.net/e12773689.html
企業支援の事例報告
よろず拠点フォーラム
県商工会連合会と県よろず支援拠点は21日、那覇市の県男女参画センターてぃるるで県地域支援機関連携フォーラムを開いた。原材料の高騰や人手不足が中小企業の経営を圧迫する中、支援機関が連携する重要性を共有した。
第1部は支援の事例が共有された。よろず支援拠点の金城力サブチーフコーディネーターは2013年創立の菓子製造販売業者の例を報告。委託を受けて他社ブランドの製品を製造するOEMが好調で4期連続の黒字となる一方、軌道に乗るまでに債務超過が膨らみ、機械化など新たな投資のための融資が難しく、支援の相談を受けた。
新たに融資をする銀行を探すため、中小企業活性化協議会に経営改善計画書の作成を依頼し、中小機構沖縄事務所は商品の品質管理のため専門家を派遣するなど、支援機関で連携したことを報告した。
活性化協議会の統括責任者補佐を務める弁護士の大島優樹氏も赤字経営だったサービス業の支援を報告しながら「事業再生や再チャレンジは早期に対応することでより選択肢が広がる。金融機関、商工会や商工会議所、専門家を含めて連携を深めたい」と話した。
第2部では各支援機関の関係者がパネルディスカッションでコロナ禍のゼロゼロ融資の返済が本格化する中での支援の重要性を話し合った。
(政経部・銘苅一哲)
詳しくはコチラ >> https://yorozu.ti-da.net/e12754607.html
事業再生、関係機関連携を
那覇 弁護士、専門家ら意見交換
中小・小規模事業者の経営相談に対応する県よろず支援拠点による「地域支援機関連携フォーラム」が21日、那覇市の県男女共同参画センターてぃるるで開かれた。コロナ禍からの事業再生支援をテーマに専門家や弁護士、金融機関の関係者らが意見交換した。財務分析や事業承継の必要性、後継者育成、金融機関との交渉など、課題が多岐にわたることから、困難を抱える事業者への早期接触や関係機関の連携の必要性を確認した。
県よろず支援拠点の金城力氏は事例報告で、赤字体質だった菓子製造企業を承継した経営者が3期連続で黒字を上げたものの、設備投資目的の新規融資を受けられなかった事例を説明した。
承継前の累積赤字で債務超過となり、保証協会が金融機関に代位弁済していたことが理由。赤字店舗の閉鎖や経営改善計画を策定して金融機関と交渉し、代位弁済の求償権消滅と沖縄振興開発金融公庫から資本性劣後ローンの融資を受けたと対応を説明した。
県中小企業活性化協議会の統括責任補佐の大島優樹弁護士は、営業赤字が継続し、事業再生も厳しかった企業について、事業整理の影響を最小限にするために、事業承継を見付けた上で法人としては破産し、事業と雇用は別法人に引き継いだ事例を紹介した。「関係機関の連携がスムーズに進み、迅速で適切な支援へつながった。早期対応で選択肢が広がる」と強調した。
(島袋良太)
令和 6 年 6 月 25 日 琉球新報 経済面掲載
詳しくはコチラ >> https://yorozu.ti-da.net/e12751950.html
沖縄タイムス掲載「経営アドバイス 10 年の実績」
相談 6 万超 中小を支援
◆ 企業名 沖縄県よろず支援拠点
◆ 業 種 経営相談窓口
◆ 所在地 那覇市
◆ 開 設 2014年
◆ 相談員 30人
2014年に中小企業庁が全国47都道府県に設置した「よろず支援拠点」は、減少を続ける中小企業、小規模事業者の持続、発展を目指して10年間あらゆる経営相談に対応するため走り続けてきた。その内容はこの紙面で毎週紹介させていただいた。
よろず支援拠点に与えられたミッションは3点。(1)専門性の高い経営アドバイス(2)課題解決のための総合調整(3)他の支援機関等に対する支援ノウハウの共有―などとなっている。つまり、さまざまな経営課題に悩む事業者の相談に対応し地域の支援機関や金融機関と連携して課題解決を図っていくことを目的としている。
これまで約3万5千の事業者から6万件以上の相談を受けてきた。相談者の満足度は平均93.3%で全国平均を上回っている。ここ数年は、首里城火災、豚熱や鳥インフルエンザ、新型コロナウイルス感染症など、社会的にも大きな被害により経営に影響を受けた中小企業・小規模事業者に寄り添い課題解決を支援してきた。
4年前から続くコロナ禍と、それに続いた物価の高騰は、約3万件以上実施されたコロナ関連融資の返済開始と重なり、県内中小企業に深刻な影を落としている。観光客が増加し売り上げが上がったとしても、原材料費や燃料費、人件費の値上がりで利益は減少している。返済原資が確保できていないのだ。昨年は休廃業や解散、倒産も史上最高件数を記録している。今年はさらに増加すると見られている。
一昨年6月に海邦総研が発表した「県内企業の新型コロナ関連融資の見通し」で「返済に懸念がある」と回答した企業は22.1%に上る。昨年から「返済ができない」など経営危機に直面し事業の存続に不安を持つ事業者が多く相談に訪れている。代位弁済の件数も、全金融機関で前期比149.2%、中には292.2%と急増している銀行もあり、金融機関には懸念のある事業者を相談に促してほしいとお願いしている。
もちろん、よろず支援拠点だけで事業者の経営危機を救えるわけではない。県信用保証協会、県中小企業活性化協議会、事業承継・引継ぎ支援センターなどの支援機関、地域の金融機関、国や県の中小企業支援施策と連携しながら、中小企業の消滅を1者でも多く防ぎたいと思っている。
(県よろず支援拠点チーフコーディネーター・上地哲)
※掲載内容は相談者の承諾を得て紹介しています。経営者のあらゆる相談を無料で受け付けます。ご相談は、電話098(851)8460のよろず支援拠点、またはお近くの商工会へお問い合わせください。
詳しくはコチラ >> https://yorozu.ti-da.net/e12708206.html
資金繰り支援から再生支援へ
沖縄海邦銀行 かいぎんエコマガ 令和 6 年 3 月号掲載「課題解決室 Vol.155」
県内では基幹産業である観光の回復による売上増加が見られる一方、物価高騰や人手不足等による人件費上昇により、企業利益は圧迫されている。コロナ禍でのゼロゼロ融資等の関連債務は増加しており、返済原資が確保できない事業者は多い。昨夏に続き 4 月には返済開始の 2 度目のピークを迎えようとしている。
休廃業・解散が過去最高に
1 月 25 日の地元紙 2 紙が一面で報じた記事は、予想されていたとは言え、ショックを覚えた。東京商工リサーチ沖縄支店が発表した 2023 年の「休廃業・解散 最多 429 件」の数値である。倒産件数も 40 件で、コロナ関連倒産は 23 件、前期より 6 件増えている。ゼロゼロ融資等の金融支援や借換制度等の国・県の支援が継続している中、経営悪化がまだ表面化していない企業は少なくない。
よろず支援拠点に寄せられた資金繰り相談も 23 年は約 500 件と過去最多になっている。相談者は全業種に及び、物価の高騰や賃上げ圧力の中、価格転嫁や DX による生産性向上にいまだ辿り着けない中小企業の経営難が見て取れる。コロナ関連融資を受け、コロナ禍を凌いできた事業者は、返済原資が確保できない環境下で債務が増加し、金融機関から新規資金調達が厳しい状況にある。
延命のための止血と輸血
コロナ禍に直面したとき、国と県もわれわれ支援機関もまず「資金繰りの維持」を軸に、企業の延命を支援してきた。コロナ関連融資の返済開始が始まったものの、経営環境は厳しさを増している。事業者はニューノーマルの経済社会の中で、新規事業も含めた事業再構築等による収益源を確保していかなければならない。そのためにも新規融資等の「輸血」は必要である。だが、その前に「止血」をしなければ出血多量で持ちこたえられない。
事業者が廃業を選択せざるを得なくなる前に、経営改善と事業再生への選択肢があることを提示して、存続と再生の道があることに気付いてもらいたい。その道を示す役割が国・県はもちろん、金融機関や支援機関にはある。コロナ禍の資金繰り支援のフェーズから再生支援のフェーズへと踏み込んでいかなければならない。
中小企業活性化パッケージ
2022 年、経済産業省中小企業庁は財務省金融庁とともに、中小企業活性化パッケージを策定、再生支援協議会を再編拡充して中小企業活性化協議会を設立、併せて中小企業の事業再生等に関するガイドラインを策定した。目的は資金繰り支援の継続と中小企業の収益力改善・事業再生・再チャレンジの促進である。未曾有の災害と言えるコロナ禍で打撃を受け、今なお経営難にある中小企業の「稼ぐ力」を再建し、増段する債務への対応を支援し、破産を回避して再生を図る狙いがある。これらの一元化した支援体制は一つ二つの支援機関でできるものではない。
地域における連携支援の最大化
去る 2 月 5 日に「コロナ後の中小事業者再生支援の現場から」と題して沖縄県地域支援機関連携フォーラムを開催した。国・県をはじめ県内支援機関が共催し、弁護士会・税理士会等の後援で、全金融機関をはじめ約 150 人の参加を得て実施。中小企業活性化パッケージ等の制作の企画立案に携わった元中小企業庁金融課の横田直忠弁護士の基調講演と、県中小企業活性化協議会の大島優樹弁護士、宮崎県よろず支援拠点の長友慶徳弁護士、県税理士会の金城達也税理士、県信用保証協会の吉田俊明部長、板橋区立企業活性化センターの中島修センター長らのパネルディスカッションをよろず支援拠点の絹川恭久弁護士の進行で論点を深め整理し、提示した。
県外からの参加者から、沖縄だからできると言われた、まさに地域ぐるみの支援の最大化を図り、中小企業の相談に対応する体制が構築された。
再生支援は資金繰りが窮してからでは遅い。経営状況が危ういと感じたらすぐに相談してもらいたい。
詳しくはコチラ >> https://yorozu.ti-da.net/e12688478.html
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